Chapelle Victoria
南仏コート・ダジュールの町グラースに、シャペル・ヴィクトリアという英国風の礼拝堂が建っています。建てられたのは19世紀末のことで、もともとはこの地に暮らす英国国教会の人々のための建物でした。1890年、ジョン・ロード・ボウズが義理の兄弟チャールズ・エドワード・ブーカーとともに団体を結成し、土地を購入して建設を進めました。設計を担ったのはリバプールの建築家ジョージ・アッシュダウン・オーズリーで、アングロ・ノルマン様式の木組みが建物の骨格を成しています。尖った鐘塔が外観に立ち、中に足を踏み入れると、船底を伏せたような湾曲の木組み天井が頭上に広がります。
完成したのは、1891年3月末から4月末にかけてグラースに滞在したヴィクトリア女王の訪問に間に合う形でした。当時はセント・ジョンズ教会と呼ばれています。女王は聖金曜日の礼拝に加え、滞在中の日曜礼拝にも毎回列席しました。感謝の印として女王が寄贈したステンドグラスは、ロンドンのヒートン・バトラー・アンド・ベイン社の作です。窓の中心はイングランドの守護聖人聖ジョージで、洗礼者ヨハネと福音記者ヨハネの二人が両脇を固めます。周りには女王のモノグラム、ガーター勲章の標語、イングランド・ウェールズ・スコットランドの紋章が添えられています。その向かいには、同じ年に亡くなったボウズを偲んで家族が寄贈した追悼窓があり、預言者ホセアとマラキに囲まれたキリストが描かれます。アリス・ド・ロートシルト男爵夫人の窓には、オリーブの枝をくわえた鳩に守られた五人の女性が並びます。中央の三人は希望、愛、真実を担い、脇の二人は聖書のミリアムとルツです。ルツの顔には、夫人の親友メアリー・サンズの面影が重ねられています。女王の訪問を機に、やがてこの名が礼拝堂に冠されるようになりました。
1907年の政教分離法の後は英国の福音派団体の所有となり、戦後にはフランス語の礼拝が広がって、1970年にフランス改革派教会へ正式に移管されました。1997年と2005年の二度の修復には、地元の団体と公的資金が力を貸しました。澄んだ音響で知られる空間は、コンサートや展覧会の会場にも開かれています。『シャペル・ヴィクトリアの友』会が保守の資金集めを支えています。2021年1月には、この建物がフランスの歴史的建造物に登録されました。
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